こんにちは、杉崎(@sugizaki_web)です。
全国の自治体が、こぞって移住者誘致に力を入れてますね。
内閣官房や総務省が公表しているデータを見ると、その勢いがよく分かります。
ちと退屈なデータの提示が続きますが、少しお付き合いくださいな。
顕著なのが、移住相談窓口を設置している自治体数の推移。
総務省の調査(令和5年度)によると、全国1,718市町村のうち、移住相談窓口を設置している自治体は1,114団体に達しており、実に約65%の自治体が組織として移住者誘致に動いています。
さらに、具体的な支援策のデータとして以下の傾向があります。
東京圏からの移住者に対して最大100万円(世帯の場合)を支給する移住支援事業に参加している自治体は、令和4年度時点で1,300以上にのぼるし、地方移住の相談窓口である同センターへの相談件数は、2008年は約3,000件でしたが、2023年には5万件を突破。
これに応える形で、自治体側も同センターへのブース出展や、相談員の配置を急増させているようです。
自治体が予算を組んで外部人材を受け入れる地域おこし協力隊の制度も、2009年度の89人から、2023年度には7,200人規模まで拡大していて、自治体にとって「移住者誘致」がもはや、標準的な政策パッケージになっている裏付けと言えますね。
| 開始当初・過去 | 現在(最新データ) | 伸び率・規模 | |
| 移住相談件数 | 約3,000件(2008年) | 5万件超(2023年) | 16倍以上に激増 |
| 地域おこし協力隊 | 89人(2009年度) | 約7,200人(2023年度) | 80倍以上の規模へ |
| 移住支援金参加自治体 | (制度なし) | 1,300以上(令和4年度) | 全自治体の約75% |
「どこもかしこも移住者獲得に必死」というのは、感覚値ではなく、行政予算や組織体制の数字としてはっきりと現れている、ということです。
移住者よりも、まずは今いる住民を大切にする
首都圏でのPRイベント、移住支援金の充実、空き家バンクの整備、「田舎暮らし体験ツアー」の開催などなど、予算をかけ、職員を動かし、パンフレットを作り、SNSで発信する。
移住者を誘致すること自体は全く正しいんですが、その前にやることがありますよね。
移住者を呼び込む前に、すでに住んでいる住民が「この町に住み続けたい」と思っているのか?をリサーチした方がいいと私は考えてます。
この地に生まれ育ってよかった、移住してきてよかった、そう思える住民が仮に少なければ、新しく移住者を受け入れても、やがて町から人が居なくなるのでは、と思うんですよね。
よく言うじゃないですか、新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると。
これを自治体に置き換えてみるとどうなんでしょう。
移住者を一人誘致するためにかかるコスト(PR費・支援金・受け入れ体制整備など)と、既存住民一人が「ここに住み続けよう」と思うために必要なコストを比較したとき、明らかに後者に力を入れた方がパフォーマンスは良いですよね。
何百万円もかけて移住者誘致に奮闘したとて、その土地にくる保証は一切ないですが、すでに住んでいる住民の満足度を上げるのに、そんなにお金はかかりませんから。
例えば、ゴミ出し通知や回覧板のデジタル化など、日常の「ちょっとした不便」を解消するシステムのを導入したとしましょう。
一度構築すれば全住民が恩恵を受けます。
1万人規模の町で1,000万円のシステムを導入しても、一人あたりたったの1,000円の投資ですよ。コスパが良いんです。
にもかかわらず、多くの自治体は新規獲得(移住者誘致)ばかりに目を向け、既存顧客(住民)の満足度向上を後回しにしている。
その結果、何が起きるかというと、移住者は来るけど数年で去っていったり、生まれ育った若者は進学や就職を機に出ていき、町の人口は、また減っていくという悪循環です。
「選ばれる町」になるための絶対条件
では移住促進の前に何をすべきか。大きく3つの軸で考えていきます。
不満の見える化から始める
住民が何に不満を持っているかを、定性・定量の両面で把握するのが良いかと思います。
– 転出者へのヒアリング
– 若者世代へのグループインタビュー
– SNS上の地域に関する投稿の分析
– 窓口クレームの分類と傾向分析
これらを組み合わせることで、「何が住民の不満の根本にあるか」が見えてくるはずです。
重要なのは、都合の悪いデータから目を逸らさないこと。「うちの町は自然が豊かで住みやすい」という自己評価ではなく、住民が実際にどう感じているかを受け止める姿勢が求められます。
第三者からどのように見えているのか、映っているのか、を把握しないことには、発展・改善などできませんからね。
誇りを育てる
意外かもしれませんが、住民の町に対する愛着心を育てるのも効果があると思います。
長野原町では現町長が「シビックプライド」と言ってますが、これはつまり、「この町に生まれてよかった」「この町に住んでいることが誇らしい」といかに思ってもらうかということです。
ハードインフラの整備ではなく、ソフト面での対策ですね。
- 地元の高校生が活躍したニュースを広報誌のトップに載せる
- 地域の職人や農家の仕事を丁寧に発信する
- 町の歴史を掘り起こして、住民が「へえ、そんな歴史があったのか」と感じる機会を作る
こうした積み重ねが、住民の「この町への誇り」という無形の資産を育てていく、といったところです。
住民を参加者にする
地域への満足度が低い住民の多くは、「自分たちは何も決められない」という無力感を持ってるのでは?と思います。
『行政が物事を勝手に決めて勝手に進めてたり、町に意見を言っても何も変わらない』そんな状態が続くと『どうせ無駄だから関わるのをやめた』となってしまうんですよね。
逆に言えば、住民が「自分たちがこの町を作っている」という実感を持てれば、満足度は上がっていくんじゃないでしょうか。
形だけのパブリックコメントではなく、本当に住民の声が政策に反映される仕組みを作ること。それこそ議員をうまく活用したり、ですね。
わかりやすく言うと、住民を巻き込むってことです。
一緒にやろうよ、町を作っていこうよ、みんなで決めていこうと行政側や議員側が積極的に声掛けを行っていくんです。
自治体経営は住民抜きにして成り立ちませんから、当たり前に参加してもらうことを前提にすれば、無力感から抜け出せるキッカケになるはずです。
この記事を読んでいるあなたはどう思いますか?
移住者誘致を否定してるわけじゃない
ここまで読んで、誤解しないでほしいんですけど、移住者誘致そのものを否定したいわけではないですよ。
優先順位の問題です。
既存住民が満足していない町に、移住者を呼んでも、その不満は移住者にも伝染するじゃないですか。
「思っていたのと違う」「地域に馴染めない」「歓迎されていない気がする」そんなことを思ってしまわれたら、人が去っていくのは時間の問題です。
土台が整っていない場所に、建物を建てても意味がないと思っています。
なので、既存住民(言い方はさておき)の満足度を上げることは、移住者誘致を成功させるための前提条件になるというロジックですね。
人口減少時代において、自治体間の競争は激化していますが、競争に勝つための本質は、派手な移住促進キャンペーンでも、充実した支援金制度でもないんですよ。
今この町に住んでいる人が、「ここに住んでいてよかった」と思える町を作ることが大切。
それが口コミになり、関係人口を生み、やがて移住者を引き寄せる。住民を大切にしない町が、移住者に大切にされるわけがないんですよ。
当たり前のようで、意外と実践できていない。この原点に立ち返ることが、町の経営における最初の一手ではないでしょうか。


