こんにちは、杉崎(@sugizaki_web)です。
日本の多くの地方自治体が、人口減少という抗えない荒波を前にして、いかに現在の行政サービスを維持し、いかに予算を削るかという、守りの姿勢に終始しています。
従来から自治体経営において、教育や福祉はコストとして捉えられてきました。
子供が減れば学校を統合し、管理コストを下げる。これは、現状をいかに延命させるかという守りの姿勢です。
しかし、このスタンスの先に待っているのは、町の魅力が削ぎ落とされ、さらに人が離れていくという負のスパイラルに他なりません。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の多くの自治体では2050年までに人口が現在の半分以下になるとされています。
この状況下で、従来の「住んでくれたら補助金を出します」という場当たり的な施策は、もはや通用しません。
他自治体との札束の叩き合いは、結局のところ、自治体全体の体力を削り合う共倒れの戦略だからです。
問われるのは、行政における投資の概念です。
多くの政治家が、目に見える道路や箱モノには巨額の予算を投じる一方で、目に見えない教育への支出をリターンの見えないコストとして後回しにしてきました。
しかし、現代において有権者が、そして移住を検討する子育て世代が求めているのは、立派な道路ではなく「自分の子供をどこで、どう育てたいか」という明確な回答です。
今、自治体に求められているのは、現状維持の管理ではなく、未来を創るための投資へのパラダイムシフトだと思います。
きたかる森のインターから読み解く、地方自治体の投資の流儀
私が住んでいる長野原町では、教育を福祉から投資へと再定義したのだと感じています。
と言うのも、来月にインターナショナルスクールが開校するんですよね。人口5,000人の町にですよ。
「LCAきたかる森のインター」は、教育特区制度を活用した株式会社立の小学校です。
バイリンガル教育やSEL(社会情動的学習)を実践し、全国から教育移住を呼び込む強力なコンテンツとして機能するのでは?という期待感があり、これは、ビジネスで言えば「市場が求めている新商品を開発してファンを呼び込む」という、経営判断の賜物です。
なぜ、わざわざ特区まで作ってインターナショナルスクールを誘致したのか。その答えは、移住者の「LTV(住民生涯価値)」にあります。
よくある「住んでくれたら補助金を出します」という施策は、一時的な呼び水にはなっても、リピーターを生みません。
ですが「ここでしか受けられない教育がある」という動機で移住してきた世帯は、所得水準も高く、地域での消費や納税だけでなく、新たな事業やコミュニティを生み出す源泉となるはず。
教育投資とは、単に子供を助けるための施策ではありません。
移住という形で「外貨と人材」を呼び込み、地域の経済を根本から底上げするための、最もリターンが大きい経済対策だと思います。
人口減少社会の最適解
もちろん、こうした新しい挑戦には軋轢や課題がつきものです。
「一部の移住者だけを優遇しているのではないか」「地元の子供たちとの間に分断が生まれるのではないか」といった懸念の声は、当然上がるでしょう。
しかし、ここからが投資における重要なマネジメントのフェーズです。
問われるのは、インターナショナルスクールという「点」を、長野原町全体という「面」の豊かさにどうつなげていくか、です。
例えば、移住してきたプロフェッショナルな人材が、地元の一次産業や観光業と交わることで、全く新しいビジネスが生まれるかもしれない。
スクールが地域のコミュニティのハブとなり、地元の子供たちにも多様な価値観やグローバルな視点に触れる機会をもたらすかもしれない。
つまり、教育投資は単なる学校誘致ではなく、町全体にイノベーションを起こし、地域の人的資本を最大化するためのエコシステムを創る試みなんですよね。
これからの時代、自治体は「なんでも揃う総合デパート」である必要はありません。
すべてのサービスを平均的に維持し、八方美人に振る舞おうとするから、予算もリソースも枯渇し疲弊していくわけですからね。
「私たちは、この町を〇〇な未来にしたい。そのために、この領域に一点突破で投資する」。
そうやって明確な旗を立て、そのビジョンに共鳴する熱狂的なファンを呼び込む。
それこそが、人口減少社会における持続可能な自治体経営の最適解ではないでしょうか。
来月、この長野原町で上がる産声は、単なる一学校の開校を意味しません。
それは、人口減少という難題に対し、地方自治体が教育という武器を手にして挑む、反転攻勢の狼煙です。
「コスト削減」から「未来への投資」へ。
長野原町のこの決断が、日本全国の地方創生における新たなロールモデルとなる日を、私は一人の住民として、大いに期待しています。






