ブログ

わがままになる努力

こんにちは、杉崎(@sugizaki_web)です。

「社会のために自分を役立てたい」とか「公(おおやけ)に尽くしたい」とか、そんな高潔な志を持つ人ほど、ある種の罠に陥りやすいんですよね。

それは、自分という個人の感情や欲求を二の次にし、最大公約数的な正解を求めて疲弊してしまうというもの。

歴史を振り返れば、社会を劇的に変えたイノベーションの多くは(エクセルしかりカップラーメンしかり)誰かの極めて個人的な「わがまま」や「偏執的なこだわり」から生まれています。

「これが不便で仕方ない」「この仕組みは生理的に受け付けない」という、一見するとエゴ丸出しの衝動こそが、硬直した社会を動かしたりします。

MITのスローン・スクール・オブ・マネジメントの教授らの研究によれば、「自分が直面した問題を解決するために製品を作ったユーザー」が、そのまま起業して成功するケースが非常に多いことが示されています。

新規事業の立ち上げや起業において「社会貢献」を第一の動機にしたグループよりも、「自分自身の強烈な不満の解消」を動機にしたグループの方が、事業の継続率が有意に高い、ということですね。

なぜこのようなことが起きるのか。理由は単純です。

利他的な動機は、成果が出ない時期に「私はこんなに尽くしているのに、なぜ報われないのか」という悲劇のヒロイン的な燃え尽き症候群を招きやすいのに対し、エゴに基づく動機は「自分が不快だから、直るまでやめられない」という、ある種の執念によって駆動されるからです。

「N=1」の違和感に潜む、社会の普遍的な不満

私たちは幼い頃から「自分勝手はいけない」「他人のことを考えなさい」と教育されてきましたよね。

もちろん、これは大事なことです。共同体を維持するための基本ルールですから。

ただ、ビジネスや社会変革の文脈において、このルールを純粋に追い求めすぎると、アウトプットはどんどん平準化されていき、解決策はどこまでも中庸になり熱量を失うことになります。

「自分の個人的な不満でもって、ひたすらに行動するなんてただのワガママでしょ」と思う方もいるでしょうけど、理解すべきは「N=1の普遍性」です。

日常生活で「この手続きはあまりに煩雑だ」「この移動の不便さは耐え難い」と本気で憤りを感じているとき、その背後には、あなたと同じ属性、あるいは同じライフステージにいる数百人、数千人の潜在的な不満と正確に同期してるんですよね。

例えば、車椅子を利用する人が「段差が不便だ」と声を上げ、スロープを設置させたとします。

これは一見、車椅子利用者という特定の誰かのためのわがままに見えるかもしれません。

ですが完成したスロープは、ベビーカーを押す親、重い荷物を持つ配達員、足腰の弱った高齢者など、実は膨大な数の「助けて」と繋がっていたことが後から証明されます(ユニバーサルデザインのパラドックスとも呼ばれますね)。

つまり、自分のこだわりを育てることは、エゴを拡大させることではなく、社会のインフラに存在する「目に見えない穴」を特定する高度なリサーチ活動なんです。

自分のために道を舗装することは、結果としてその後に続く何千人もの歩みを軽やかにする、効率的な公共投資と言えます。

エゴを社会のインフラへと昇華させる

さて、ここまでの論理で「わがまま」の重要性を説いてきましたが、単なる「自分勝手な振る舞い」と、社会を救う「わがまま」には決定的な違いがあります。

それは、その衝動を仕組みへと昇華させるための努力があるかどうかです。

ただ「不満だ!どうにかしろ!」と叫ぶだけなら、それはただのクレーマーです。

しかし、「この仕組みは許せないから、勝手に直す」と考え、実際にプロトタイプを作り、周囲が納得せざるを得ない論理で武装し、行動していく。これこそが、本記事のタイトルである「わがままになる努力」の正体です。

自分のこだわりを突き通すには、単なる情熱だけでなく、マーケティングの視点や、相手の利益を損なわないための戦略的な立ち回りが必要です。

自分が「どうしてもやりたいこと」を実現するために、他者のメリットと接続させる変換作業を行う。この知的ハードワークこそが、個人のエゴを社会のインフラへと変える肝となります。

世の中のおかしなところを直そうとしたり、不便を解消したり、理想を追求するために費やすエネルギーは、同じ時代を生きる無数の人への希望の先行投資になる。私はそう思っています。

これからは、空気を読んで自分を抑えるのではなく、自分の内側にある「どうしても譲れない違和感」を大切に育ててみてください。

その違和感こそが、未来のスタンダードの種になるはずですから。

あなたが徹底的に「わがまま」になり、自分を救うための道を切り拓くとき、その背後には気づけば新しいインフラが出来上がるかもしれません。

PAGE TOP