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そのままじゃ移住者は定着しない

こんにちは、杉崎(@sugizaki_web)です。

地方への移住を検討する人が、最初にぶつかるのは仕事のことです。

住みたいかどうかより先に、仕事があるのか、ないのかが先に来る。その問いに答えが出なければ、検討はそこで止まります。

このことは移住促進を担当する行政の職員もわかっていて。「関心を持ってくれる人は増えたんですけど、実際に来てくれる人は少ないし、住み続けるなんてさらにハードルが高くて、、」なんて言葉はよく耳にします。

住宅の補助制度を整えても、子育て支援の情報を充実させても、移住体験ツアーが好評だったとしても、移住を検討する人の頭の中の大部分を占めるのは、仕事の問題。

これが解決しなければ、以降の話は全部宙に浮くのは当たり前で、仕事の見通しが立っていない人には全く関係のない話になるんですよね。

仕事が見つからないワケ

では、その仕事の問題とは具体的に何か。大きく分けると二つあります。

一つ目は、求人票に載っている仕事と移住者が求める仕事のずれです。

地方の有効求人倍率は、数字だけを見ると悪くなくて、求人がないわけではありません。

ですが求人のほとんどは、介護、建設、農業、製造業の現場職が大半を占めていて、都市部で働いてきた30代、40代が、これらの仕事にそのままスライドできるケースは多くありません。

積み上げてきたキャリアや専門性の活かし方が見えないわけですよね。

これでは、移住を踏み止まるに決まってます。

二つ目は、収入の問題です。

求人の内容だけでなく、金額の問題も無視できません。

求人はあるにはあるけれど、年収が大きく下がることが多い。住居費が下がるから生活できるはずだ、という説明を行政側はよくするんですが、実際はそう単純ではありません。

例えば子どもの教育費は地域に関係なくかかりますし、車に乗る頻度は都市部より格段に上がる。医療機関へのアクセスが遠ければ、時間とお金の両方がかかってきますしね。

子どもを持つ世帯にとって、収入の問題は特に重くのしかかるじゃないですか。

教育にかけたいお金が削られることへの不安は、移住の意思決定を止めるには十分すぎる力を持ってます。

パートナーの同意を得るためには収入の見通しが欠かせませんし、一人が納得しても、家族全員の合意が得られなければ動けません。

リモートワーク移住も悪くないけれど

こうした状況の中で、「じゃあ今の仕事をそのまま続けながら移住すればいい」という選択をする人も勿論増えています。

コロナ以降に広がったリモートワークが、その選択肢を現実のものにしましたしね。

仕事は都市部の会社にそのまま所属しながら、生活の場だけを地方に移す。キャリアも収入も変えずに移住できるなら、確かに一つの答えに見えます。

ただ、ここにも別の問題があって。

リモートワーカーは、地域の雇用に直接的に貢献していないんですよね。

地域のお金の流れにも、人の流れにも、あまり関わりを持たない形で生活することになりやすい。行政からすると「移住者数」にはカウントされるけれど、地域経済への寄与という意味では限定的になる。

また、リモートワーカー自身が孤立しやすいという問題もあります。

地域のコミュニティに入る接点がなく、職場の同僚は画面の中にしかいない。地域の人間関係の作り方がわからず、結果として数年で都市部に戻っていくケースは少なくないんです。

せっかく仕事の問題を自分で解決して移住してきた人が、人間関係の問題で離れていくことも往々にしてあるんですよね。

移住施策の組織設計が良くない

行政が、この仕事の問題に向き合えないのは構造的な理由があります。

移住促進は、多くの自治体で「まちづくり」や「企画政策」の部署が担当していますが、地域の産業や雇用は「産業振興」や「商工労働」の部署が担当していて、両者がうまく連携できてないんですよね。

移住担当の職員が、地域の求人状況を把握していないことは珍しくないし、産業振興の担当者が、移住者のキャリアニーズを知らないことも同じくらいある。

それぞれが自分の担当範囲を動かしているだけで、仕事の問題を誰が解くのかが決まっていないケースはよくあります。

結果として、施策の中に、移住者が最も重視する「仕事」が入ってこない。

議会で移住促進の予算を審議するとき、住宅補助や移住相談員の人件費は出てきても、移住者の就労支援や産業とのマッチングに関する予算はほとんど出てこないのも、このような理由からだと踏んでいます。そもそも議題に乗ってこないということですね。

議員ができること・やらなければいけないこと

この縦割りの構造に対して、議員としてできるのは問いを立てることです。

  • 移住後の就労状況を追跡しているか
  • 移住担当と産業振興が合同で検討する場があるか
  • 地域おこし協力隊の任期終了後、何割が地域で仕事を見つけているか

こういった問いを予算委員会や一般質問で出し続けることが、縦割りの壁を崩す第一歩になろうかと思います。

余談ですが、地域おこし協力隊は、3年間の任期付きで地方に移住して地域活動に関わる制度で、2023年度の隊員数は約7,200人。

移住促進の文脈で、地域おこし協力隊はよく成功事例として紹介されますが、任期後に地域に定着できている割合は決して高くありません。

任期が終われば給与は止まり、その後の仕事を自分で見つけられるかどうかは、本人の力量と地域に仕事があるかどうかにかかっています。

行政が「出口」を用意しているケースは、まだ少ないんですね。

任期中に起業準備ができた人、地域の事業者に拾ってもらえた人は残れますが、そうでない人は、任期が終わると同時に地域を離れていく。

「移住者を受け入れて3年後に送り出す」これを繰り返しているだけでは、地域に人なんか定着するはずがありません。

構造を変えていく

田舎移住にさしあたり、仕事の壁が残り続けてる原因は、行政が怠けているからではありません。

移住担当の職員は、自分に与えられた予算と権限の中で動いていて、産業振興の職員も同じです。

縦割りの構造は、現場の職員が作ったものじゃなくて、組織の設計と予算の仕組みが作り出しているもの。

だから、現場を責めても変わらない。変えるべきは構造です。

移住と産業を分けて考える予算のつけ方、担当部署の分け方、成果の測り方。これを変える権限を持っているのは議会です。

移住者が増えた、相談件数が増えた、という報告を受け取るだけでなく、移住後に仕事が見つかったか、収入は維持できたか、5年後も地域にいるか。そこまで追いかける仕組みを作ることを、議会側から求めていく。

それが、仕事の壁を崩すための、議員にしかできないアプローチだと思っています。

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